老人ホームへ入所した親が住んでいた家を、そのままにしておくべきか、貸すべきか悩まれるご家庭は少なくありません。実は、その選択が将来の相続税に影響することもあります。
母が要介護認定を受けたため、2年前から特別養護老人ホームへ入所しています。
実家はそのまま空き家にしていますが、固定資産税や維持管理の負担もあるため、最近になって「誰かに貸した方がいいのではないか」という話が家族の間で出ています。
一方で、知人から「老人ホームに入った後の自宅は、相続税の特例が使えることがある」と聞きました。
もし今後、母が亡くなった場合、実家の土地について相続税が安くなる特例は受けられるのでしょうか。また、空き家を賃貸した場合に影響はありますか。
老人ホームへ入所した後に自宅が空き家となっていても、一定の要件を満たせば「小規模宅地等の特例」(以下、特例)が適用できる可能性があります。しかし、自宅を安易に賃貸するなど利用方法によっては、この特例が適用できなくなる場合があります。老人ホーム入所後の自宅の活用方法は、慎重に検討することが大切です。
小規模宅地等の特例は、亡くなった方が住んでいた自宅の土地について、一定の要件を満たした場合に相続税評価額を大幅に減額できる制度です。
しかし近年は、高齢になって老人ホームへ入所し、自宅が空き家になるケースも少なくありません。
そのため相続税の計算においては、介護のために老人ホームへ入所した場合には、一定の要件を満たすことで、入所前まで住んでいた自宅の土地についても特例の対象として取り扱うこととしています。
今回のお母様は、要介護認定を受けたうえで特別養護老人ホームへ入所し、その後は自宅を空き家のまま保有しています。
このような場合には、自宅に住んでいなかった期間があったとしても特例を受けられる可能性があります。
「空き家になっていたから対象外」とは限らない点に注意が必要です。
老人ホーム入所後の自宅の利用状況によっては、特例が適用できなくなることがあります。
例えば、
- 他人へ賃貸していた
- 店舗や事務所として利用していた
- 被相続人や被相続人と生計を一にしていた親族以外の人が居住していた
といった場合には、特例の適用を受けられません。
「空き家のままではもったいない」と考えて活用した結果、この自宅の土地について特例が適用できなかった、というケースもあるため注意が必要です。
老人ホームへ入所した後の自宅は、管理や維持費の負担があるため、売却や賃貸を検討することも多いでしょう。
一方で、土地の評価額が高い地域では、この特例が適用できるかどうかによって相続税額に大きな差が生じることがあります。
しかし、「特例を受けるために空き家のまま維持すること」が必ずしも最善の選択とは限りません。 空き家を長期間放置すると、建物の老朽化や近隣への影響、防犯上の問題などが生じることがあります。また、管理が不十分な場合には、ご家族の負担が大きくなる可能性もあります。
そのため、自宅を売却した方がよいのか、維持した方がよいのか、あるいは別の活用方法があるのかについては、相続税だけでなく、今後の管理負担やご家族の状況も含めて総合的に判断することが大切です。
相続税対策として有利な選択が、必ずしもご家族にとって最善の選択とは限りません。老人ホームへの入所後に自宅の扱いで悩まれた際は、相続税・空き家対策・財産管理の観点から早めに専門家へ相談することをおすすめします。
<参考>
国税庁「老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例(平成26年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する場合の取扱い)」
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